■大柳貴行さん
道の駅「さくらの郷」に勤務し、いわしろ高原産のそばを打っている。
さくらの郷は、地域の景観維持を目的に、いわしろ地域にて蕎麦の育成をスタート。現在は、食堂での提供は100%地元産そば粉を使用しており「おいしい」と評判。2017年にオープンした新しい食堂では、そば打ちをガラス越しに見ることができる。(いわしろ高原産そばについてはこちらをご覧ください:道の駅さくらの郷 )
しかし、蕎麦の質は有名な名産地ほど安定はしていない。それをお客様に提供するときには、一定の美味しさを持つ蕎麦としてクオリティを維持しなければいけない。それが成り立つのは、蕎麦打ち職人たちがいるから。
そんな蕎麦打ち職人さんらはほとんど全員が60歳以上の大ベテランだが、その中に混ざり、現在は中心として頑張る若手蕎麦打ち職人さんにお話を伺った。
「軽い気持ちで始めた蕎麦打ち。知れば知るほど奥深い世界です」と話す大柳さん。数年前、親の知人に紹介されて道の駅「さくらの郷」に勤めた当時は、自分がこんなに夢中になれるとは想像もできなかったそう。
もちろん初心者で最初から上手に打てたわけではなく、苦しい時期もあった。
「最初の1か月間は“戦力外宣告”を受け、自宅で蕎麦打ちの毎日。朝、昼、晩とそばを食べてましたね(笑)」。
その後も「1、2年目は、思うように蕎麦が打てずにつらかったです」という大柳さんは、職場の人々の温かさやお客さんの「美味しかったよ」という声に励まされ、ある時期から蕎麦打ちの面白さに目覚めたという。

「僕にとって蕎麦との出会いは人生のターニングポイント。蕎麦打ちを始める以前の自分は、人生に手ごたえのようなものが感じられなかった。でも、蕎麦に出会い、自信がもてるようになりました」。
「蕎麦道を極めたい」という思いとともに、新しいことにもチャレンジしたいという意欲が湧いて簿記試験にも挑戦。現在は調理師資格のための勉強も始めている。
「休日の過ごし方は?」とたずねると、「隣町のスポーツジムに通っています」。その理由を聞いてびっくり!
「忙しい時期は1日100食分くらい蕎麦を打つことがあり、腰が痛くなるんです。蕎麦を打つにはまず身体づくりが大事なので、できるだけジムに通うようにしています」。
大柳さんにとって「蕎麦を打つこと」が生活の中心にあり、毎日の楽しみや喜びの源でもあるよう。

大柳さんに、さくらの郷の蕎麦の特徴についてたずねてみました。
「さくらの郷では”会津のかおり”という品種のそばを栽培しています。蕎麦粉は、香りがよく弾力のあるのが特徴ですが、より“元気な蕎麦”になるよう打ち方を工夫しています」。
いわゆる「名人」と呼ばれる人は、どんな蕎麦粉を使っても美味しい蕎麦を打てることに感銘を受けた大柳さんは、蕎麦打ちの奥深さを感じたそう。
「蕎麦打ちは、何度も失敗しては、できるようになっていくことの繰り返し。まだまだ改善できることがあるし、もっと上手に打てるようになりたい。そういう思いが僕を支えています」。
数えきれないくらいの回数、そばを打っているので、今ではゆでた後の味が想像できるようになったという大柳さんは、「毎日、岩代の蕎麦と対話をしているような感じです」と爽やかな笑顔を見せてくれました。

最後に「将来の抱負や希望は?」と質問してみました。
「若手の蕎麦打ち仲間ができたら嬉しいですね。以前、大会で女性が蕎麦を打つのを見たことがありますが、すごくかっこよかったです。さくらの郷にも、蕎麦打ちに興味のある人なら、男女を問わず来てほしいと思います」。
道の駅「さくらの郷」で誕生した若手蕎麦職人第1号の大柳さん。
お客さんの笑顔を励みに、「蕎麦道」を極める毎日を送りながら、蕎麦について熱く語り合える仲間との出会いを求めているようでした。
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