●いわしろの湧き水
水道は生命にかかわる最重要インフラです。2020年時点の都道府県別の上水道普及率を見ると、全国平均は98.1パーセントに達しています。都会では上水道の有無など気にすることもないほど当たり前に整備されているのですが、福島県の上水道普及率は94.2パーセントと全国でも下のほう。
公営水道が整備されていない地区では引き水や井戸水が飲用に利用されます。いわしろでも上水道が設置されていない地区が広いようですが、その代わり、蛇口をひねればおいしい天然水が出てくるのです。

私の住まいは上水道だけでなく下水道まで整備されている恵まれた地区なのですが、やはり天然水のほうがおいしく感じられます。しかもいわしろには公道沿いで湧き水を汲める場所が複数あるので、クルマで出かけるついでに湧き水を汲んでくるのが最近の習慣になっています。
そこで、今回はいわしろを代表する湧き水を3か所、紹介させていただきます。
これらは阿武隈山系の花崗岩地帯の深部の亀裂から湧き出してくる地下水で、表層を移動してきた地下水ではないようです。いずれの水場もよく整備されており、持参のタンクで水を持ち帰る人をよく見かけます。
それぞれの水場に成分分析や水質検査の情報が掲示されてはいるのですが、残念ながら検査データは近年のものではありません。いくら地域の名水とはいえ、衛生面での保証はなく、あくまで自己責任で利用するものです。水道水のように塩素で消毒されていないので劣化しやすいですから(とくに春から秋)、湧き水を生で飲むことはおすすめしません。私はこれらの汲み水を室内の冷暗所に保管しておいて、飲む際は必ず煮沸します。調理に使ったりお茶やコーヒーを淹れたりして、ありがたく味わっています。
◆桜清水
私の見るところ、水量がいちばん安定しているのが桜清水です。いわしろの中心部から日山へ向かう途中にあります。冷たい水がホースから勢いよく噴き出し、タンクやペットボトルに水を貯めやすいようにくふうされている感じです。水汲み場はいつも明るく清潔に保たれていて、ベンチが置かれているので休憩もできます。



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◆海谷(かいや)清水
「道の駅さくらの郷」にほど近い海谷清水は昔から知られた名水で、隣接の休憩所のほか石に掘られた看板(道標?)まであります。いわしろが誇るお花見ポイント「合戦場のしだれ桜」「桜回廊」からも近く、国道沿いで駐車スペースも広いので、水汲みはしやすいです。


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◆諏訪(すわ)清水
小浜地区の諏訪神社の下に湧く水(手水舎)が諏訪清水です。比較的交通量の多い県道沿いに位置し、駐車しにくいのが難点ですが、地域の人々に愛される清らかな水場が保全されています。県道沿いの神社とはいえ、街灯や照明などはないので、日没後は真っ暗になります。いうまでもありませんが、水汲みは明るいうちに行きましょう。


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★都会から移って来る人にお伝えしたいのは……天然水を自分で汲みに行くという、このぜいたくさ。水道水のようなカルキ臭はもちろんありません。天と地の間でその恵みをいただいて生きているのだと実感できる、などというと大げさでしょうか。でも、そんな気もちになります。貴重な水場を管理してくださっている地域の方々に感謝申し上げます。