武藤琴美
職業:デザイン、イベント企画、民泊
福島県二本松市出身。関東で働いたのち、二本松市の地域おこし協力隊(いわしろ地域担当)を経ていわしろに定住。
素敵な図書館のある旧岩代町に住みたいという子どもの頃の夢を叶える形となった。
「普段は自宅で仕事をしています。窓から入る陽の光や木々の木漏れ日が愛おしいです」。
平成26年の秋に地域おこし協力隊として移住した武藤琴美さんの現在の仕事は、デザインや編集がメイン。
現在の仕事の依頼元は県内・県外が半々だという。
「むしろ、田舎の方がいろんな仕事の振り幅・可能性があり、事業としても安定している気がします。」

自宅1階の倉庫を活用し、事務所にしている。壁は夫と一緒に手作業で塗った。週の半分を自宅で作業にあて、残りは打ち合わせや気分転換を兼ねてノマドワークにあてるという。
「いわしろは福島市や郡山市へのアクセスも良く、県内あちこちのお客様のもとに駆けつけられます。もし福島市に住んでいたら、こんなふうな働き方はできなかったと思います。
それに、福島県は温泉が多いので、時には温泉宿に滞在しながら仕事もできます。温泉の泉質は最高で料理も美味しい。温泉街へ行くにも交通費はほとんどかからず、平日なら宿も安い。岳温泉へは程よい距離感で、よく夫婦で行きます。遠すぎたら億劫だし、近すぎたら特別感がなくてリフレッシュできない。でも岳温泉なら、30分程度で着くので、負担が少ないけど日常とは距離ができていい息抜きです。ちゃんとしたお宿でも5,000円で泊まれることもありますから、交通費を入れても6,000円以下。都会ならこうはいきませんね。強いていうなら、リラックスしすぎて仕事が捗らないのが難点です(笑)」

「移住して困ったことは?」という質問に笑う。
「う〜ん。小さな困りごとはあったけど、それは都会でもあったし、いわしろだから困ったということはないと思います。
通販を活用したり、サブスクも活用していますので、よく言う『買い物難民』のようなことも今のところないです。病院に関しても、喘息持ちで体が丈夫ではない私でも今の所は大丈夫。実は、何度か救急車のお世話になった実体験があって(笑)、でも田舎だから救急車が来ないことはなくて、近いところに町のお医者さんもいます。
将来運転ができなくなったら〜っていうのは、30年後の社会の進歩の具合がわからないので今過剰に心配しなくても大丈夫なんじゃないかなと楽観的に考えています。2020年は一気にリモートワークが当たり前になったように、働き方・暮らし方は時代の大きな分岐点で平気で思わぬ方向に変化するので、都会だから安心、田舎だからやばいとは一概に言えないと思います。リスクはどこにでもある。大事なのは自分がどこでどうしたいか。」

「移住をして、はじめて『人の必要性』が、わかった気がする」と話す武藤さん。
「移住をして楽しかったことばかりではありません。自分のいたらなさを感じる日もあれば、トラブルに巻き込まれる日もある。それに、自分がトラブルを巻き起こすことも(笑)。
そんな時に、頼れた人がいたから、今もここに住むことができています。」
「移住者って『受け入れてくれる地域の人』がいなければ何にもできないんですよ。起業しようにも、農業やろうにも、暮らしていこうにも。土地勘も人脈もないんだから。
お金だけあって1人でできる範囲で暮らすなんて、都会のアパートに籠っているのと変わらない。せっかく地方に来たんだから、美味しいものを食べて、道で出会った人に気兼ねなく挨拶して、自分のやりたい仕事をしたいじゃないですか。
そしたら、一緒の価値観で隣を歩いてくれる『人』ってめっちゃ大事ですよね。そういう人と出会えたのは収穫です。」
「ちょっと車で行けば温泉に入れて、窓から見える四季の景色は美しく、素敵な図書館もあって、いい食べ物と祭りがある。ここにはいいトコロがたくさんあります。でも、結局、最後に私をここに留めてくれたのは “人” です。
場所にこだわらない仕事だからこそ、良い景色と何よりも、心豊かな人の近くにいたいんです。」
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